2026年4月4日、オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権(ANWA:Augusta National Women’s Amateur)で通算14アンダー202ストロークという大会新記録を樹立し、4打差でマリア・ホセ・マリンが初優勝を飾りました。
マリア・ホセ・マリン(Maria José Marín)
2006年生まれ、コロンビア・カリ出身の19歳で、米アーカンソー大学(アーカンソー・レイザーバックス)のジュニア(3年生)として活躍するアマチュアゴルファーです。
2025年には2年生ながらNCAA女子ゴルフ個人タイトルを制覇し、世界アマチュアランキングはOWGR7位(2026年4月時点)に位置しています。コロンビアとメキシコの血を引き、「コロンビア人として、またメキシコ人としての誇りをもってプレーしている」と本人が語るとおり、南米・中米のゴルフ界を代表する存在として急成長しています。
2026年4月4日、オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権でのスコアカードは65・69・68の3ラウンドで、全ラウンドを60台でまとめた唯一の選手です。
この優勝により、シェブロン選手権・全米女子オープン・AIG女子オープン・エビアン選手権という4つのプロメジャー大会への出場権を獲得しています。
ANWAとは何か:女子アマゴルフ界最高峰の大会が持つ特別な意味
2019年創設から8年で確立した「女子アマのマスターズ」という地位
オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権は、マスターズ・トーナメントを主催するオーガスタ・ナショナルGCが2019年に創設した女子アマチュアゴルフの最高峰大会です。
第1回大会の直前にジェニファー・クプチョとマリア・ファッシ(マリンの先輩アーカンソー大OG)が演じた歴史的な一騎打ちが大会の格を一気に高め、現在は世界上位72名のアマチュアが招待される最も権威ある大会として確立されています。
過去の優勝者はジェニファー・クプチョ(2019)、梶谷 翼(2021)、アナ・デービス(2022)、ローズ・チャン(2023)、ロッティ・ウォード(2024)、カルラ・ベルナット・エスクデル(2025)と、全員がその後プロで活躍する逸材ばかりです。
マリンはこれら歴代王者に連なる第7代チャンピオンとなりました。なおクプチョとローズ・チャンはマリンと同様にNCAAチャンピオンとしてANWAも制しており、マリンはその系譜を継ぐ3人目です。
勝敗を分けた「12番の攻防」とマリンのゲームマネジメント
12番「ゴールデンベル」:155ヤードの名物パー3が持つ歴史的難易度
オーガスタ・ナショナルGCの12番「ゴールデンベル」は距離155ヤード(約142メートル)のパー3です。
グリーン手前を流れるレーズクリーク、奥行きの浅いグリーン、そしてゴルフで最も読みにくいとされる渦巻き状の気流が重なり、距離の短さとは裏腹にマスターズ史上最も多くのドラマを生んできた1ホールです。1992年にフレッド・カプルスのボールが池の縁で止まって優勝に繋がった話は今なお語り継がれており、2016年にはジョーダン・スピースが同ホールで4打を叩いてマスターズの主導権を失っています。
タリーの12番での「7」とマリンの幸運:一瞬で逆転したスコアボードの数字
最終日、首位のアスタリスク・タリー(17歳)は前半10ホールをボギーなしで巧みにプレーし1打差リードを維持していましたが、11番パー4でこの大会初のボギーを喫してマリンと並びます。
続く12番でグリーン奥のバンカーに入れ、そのバンカーショットをレーズクリークに入れてドロップ、さらに次打もクリークに入れるという痛恨の「7」を叩き、一気にマリンより5打差に後退しました。
一方、マリンの12番ティーショットはグリーン手前の土手に着弾後、クリークに向かって転がりかけましたが、土手の縁のごく僅かな草に止まりました。マリン本人は「ミラクルだった。神様がボールを止めてくれたと思う」と語っており、1992年のカプルスと同様の幸運でした。
しかし注目すべきはその後の判断です。マリンは「パーで凌いで次に行く」と即座に切り替え、直後の13番パー5では冷静に2オンを狙ってバーディを奪い、リードを4打に広げています。幸運をパフォーマンスに変換した判断力こそが、この勝利の本質的な要因です。
大会4度目の出場で掴んだ初優勝:キャディ交代という戦略的決断の効果
マリンのANWA出場歴は2023年(T14)、2024年(T30)、2025年(予選落ち)、そして2026年の優勝という4試合です。
過去3回はいずれもオーガスタ・ナショナルGCで失速するパターンが続いていましたが、今大会は明確な変化がありました。
例年はキャディを父親のホセ・マリン氏が務めていましたが、今大会では3月のチャンピオンズ・リトリートでのプラクティスラウンドで知り合った地元消防士のダレン・ウー氏に交代しています。
なんとウー氏は、マリンのティーオフ4時間前まで、消防士として14時間の勤務をしており、夜勤明けからのANWAのキャディでした。
ウー氏はチャンピオンズ・リトリートで6年間キャディを務めたベテランで、「ミスショットの後に”深呼吸して、落ち着け”と言い続けてくれた。プレッシャー下での精神的な支えとして大きかった」とマリン本人が語っています。
過去の予選落ちを踏まえた明確な戦略変更が、最高の結果に直結した事実は、自己分析と改善能力の高さを示すデータです。
オーガスタが証明したマリンの資質:1週間のスタッツが示す強さの内訳
大会公式記録によれば、マリンは全3ラウンドで60台をマークした唯一の選手であり、ボギー回避率で全体1位(3ボギーのみ)、バーディ以上の数で1位タイ(17個)、3パット数は週を通じてわずか1回でした。
4打差の最終的な2位はアンドレア・レブエルタ(スペイン)で通算10アンダー206でした。
この数字は「幸運に助けられた優勝」ではなく、コース全体を通じた精度の高さを裏付けています。アーカンソー大の先輩でANWA第1回大会準優勝者のマリア・ファッシは「彼女の強みは自分のレーンを守り抜く集中力。どんなプレッシャー下でも周囲に流されない」と評しています。



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