59club Academyが立ち上げた「グローバル・インターンシップ・イニシアチブ」とは何か
2026年、英国のゴルフ業界専門メディア「Golf Business News」が、欧州・中東の名門ゴルフクラブが導入し始めた新しい人材育成プログラムを報じています。
59club(ゴルフ業界の顧客体験・サービス品質評価機関)が「Global Talent Solutions」と提携して立ち上げた「グローバル・インターンシップ・イニシアチブ」は、業界が長年抱えてきた2つの課題——季節的な人手不足と将来の経営人材の育成——を同時に解決することを目的としたプログラムです。
第1期生はすでに18名の若手プロフェッショナルが、世界各地のゴルフ運営部門に配属されています。
配属先には英国のザ・ベルフリー・ホテル&リゾート、ザ・ダッチ、フォックスヒルズ・クラブ&リゾート、アイルランドのザ・ホーソーン・バイ・ゴールウェイ・ベイ、スコットランドのロイヤル・ドーノック・ゴルフクラブ、UAEのサディヤット・ビーチ・ゴルフクラブ、ヤス・エイカーズ・ゴルフ&カントリークラブ、ヤス・リンクスといった国際的に知名度の高いコースが含まれます。英国・アイルランド・欧州・中東での展開が成功を収め、2027年期の募集も追加クラブの参加が決まるなど需要が拡大しています。
3年間で6回の「ホームクラブ」「アウェイクラブ」ローテーション:日本では聞き慣れない仕組み
「同じクラブに長く勤める」が当たり前の日本との発想の違い
このプログラムの最大の特徴は、3年間で国際的な配属を6回経験するローテーション構造です。インターンは自身の「ホームクラブ」と「アウェイクラブ」を交互に経験します。
これにより参加クラブ側は、自クラブの運営に精通した人材と、新しい視点を持ち込む人材の両方を得られる仕組みになっています。
日本のゴルフ場運営の実態と比較すると、この発想の違いがより鮮明になります。
日本では現在、アコーディア・ゴルフやPGMホールディングス(パシフィックゴルフマネジメント)といった大手運営会社が経営難に陥ったゴルフ場を次々と買収・統合する形で業界再編が進んできました。
バブル崩壊後、会員権相場の急落と接待ゴルフの減少を背景に経営破綻するゴルフ場が相次ぎ、外資ファンド傘下の運営会社がそれらを買収・再生させる構図が定着しています。
しかしこの「買収による規模拡大モデル」は、各施設のスタッフが系列内の他施設へ計画的に異動して経験を積むという、欧州型の「国際ローテーション人材育成」とは性質が異なります。日本のゴルフ場スタッフは多くの場合、特定の施設に長期間勤務する形態が主流で、支配人候補としての将来を見据えた多施設ローテーション制度はまだ一般的ではありません。
実務経験とPGA・League Managers Associationの教育プログラムを同時提供する仕組み
実務経験に加えて、インターンは構造化された教育プログラムを受講します。59club Service Excellence研修、各種オペレーション資格、そしてRobincroft Consultancyによるオーダーメイドのリーダーシップ開発が含まれます。さらに英国PGA(The PGA)とLeague Managers Association(プロサッカー界の指導者育成団体)との提携により、専門家向けセミナー・ウェビナー・リーダーシップコンテンツへのアクセスも提供されています。
ここで注目すべきは「League Managers Association」との提携です。
これはサッカーの監督・コーチを育成する団体であり、ゴルフ業界がスポーツマネジメント全般の知見を取り込もうとしている姿勢を示しています。日本のゴルフ場運営においては、こうした他競技のマネジメント手法を体系的に取り込む教育連携の枠組みはほとんど存在しません。
人手不足対策としての側面:日本の「外国人労働者導入」との対比
「事前にスクリーニングされた人材」を派遣機関が一括管理する効率性
このプログラムは人手不足対策としての側面も強く持っています。参加クラブにとっては採用にかかる負担を軽減しながら、将来の管理職への長期的な後継者育成モデルを構築することが狙いです。
Global Talent Solutionsが人材の発掘・審査・面接・オンボーディング支援までを一括管理することで、クラブの経営陣は内部運営に集中しながら、事前にスクリーニングされ文化的に適合した人材にアクセスできます。
日本でもゴルフ場の人手不足は深刻な課題です。ゴルフ場専門の求人サイト運営者への取材によれば、ゴルフ場だけでなくゴルフ業界全体で人手不足が深刻化しており、特定の職種が著しく不足している実態が報告されています。
日本ではこの課題への対応として外国人労働者の受け入れ拡大が政策的に進められていますが、キャディーやコース管理の現場では高い語学力が求められるなど、外国人材の活用には多くのハードルが存在しているのが実情です。
59club型のプログラムが「教育とキャリアパスを伴う国際インターン」という設計を持つのに対し、日本の議論はまだ「単純労働力としての受け入れ」の段階にとどまっている点で、根本的なアプローチの違いが見えます。
参加者の声と参加クラブの評価:「世界クラスの施設への明確な道筋」
プログラムの第1期生であるフリン・オキャラハン氏(スコットランド・ロイヤル・ドーノック・ゴルフクラブの「ホームインターン」)は、「このプログラムは私に世界クラスの施設への明確な道筋を与えてくれた。同時に国際経験、リーダーシップスキル、グローバルなネットワークを築く助けになっている」と語っています。
受け入れ側のクラブからも前向きな評価が寄せられています。ザ・ダッチのマネージング・ディレクター、フィル・ヘルスビー氏は「このプログラムは現在および将来のスタッフ需要に非常に良い影響をすでに与えており、今後も与え続けるだろう。ゴルフ業界にとって素晴らしい取り組みだ」と評価しています。
2027年期の応募が現在公式に開始されており、ゴルフ運営部門に加えてアグロノミー(コース管理)、フード&ビバレッジ、レジャー部門への拡大計画も進行中です。応募枠には限りがあるため早期登録が推奨されています。
日本のゴルフ業界への示唆:「キャリアパスとしてのゴルフ場勤務」を再構築する視点
このプログラムが示す最大の示唆は、「ゴルフ場で働くこと」を単発の雇用ではなく、3年間という明確な期間で国際経験とリーダーシップ資格を積み上げる「キャリアパス」として再構築している点です。
日本のゴルフ場運営の現場でも、慢性的な人手不足の中で「採用してもすぐに離職してしまう」という課題が指摘される一方、こうした構造化された成長パスを提示する取り組みは限定的です。
欧州・中東で先行するこの仕組みが、今後アジア太平洋地域の施設にも展開される可能性は十分にあり、日本のゴルフ場運営会社にとっても人材戦略を見直す参考になり得る事例です。

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