キャンピングカーの中にあるのは、ペブルビーチとセントアンドリュース:オーストラリア初のモバイルゴルフシミュレーター誕生
「キャンピングカーを停められる場所なら、どこでもゴルフができる」——そんなコンセプトを掲げたビジネスがオーストラリアで誕生しました。ニューサウスウェールズ州ハンター地域を拠点とする起業家グループが立ち上げた「ゴルフデイズ(Golf Daze)」は、オーストラリア初の専用設計キャンピングカー一体型モバイルゴルフシミュレーターです。
キャンピングカーの内部に搭載されているのは、タイガー・ウッズがその開発に関わったとして知られる「Full Swing KIT」シミュレーターテクノロジーです。このシステムにより、ペブルビーチやセントアンドリュースを含む世界1,000コース以上を4K解像度でプレーできます。コースマネジメントの練習からコンペ形式のイベントまで、専用施設を持たない場所でもリアルなゴルフ体験が可能になります。「コースに行けない人のところへゴルフを届ける」という発想の転換が、このビジネスの本質です。
「キャンピングカーが停まれれば、そこがゴルフコースになる」:3人の創業者が持ち寄った異色のキャリア
子供の頃のクリケット仲間から40年後の共同創業者へ:マーク・フォースター&ジャスティン・ヘイルズのキャリア
ゴルフデイズの共同創業者でゼネラルマネージャーのマーク・フォースターは、ホスピタリティ・イベント・ビジネス開発で20年以上のキャリアを持ちます。
フォースターとともに創業者に名を連ねるジャスティン・ヘイルズは、キャンピングカーシェアリングのプラットフォームとして知られる「Camplify(キャンプリファイ)」の創業者として知られる起業家です。2人はハンター地域のカーリカーリで子供時代にジュニアクリケットで出会い、約40年間の友人関係が今回の事業に結実しました。
ヘイルズは10年以上のキャンピングカー業界での経験を活かし、JBキャラバンズの創業者アレックス・ピー氏とシャロン・シュ氏とともにキャンピングカー本体を設計・製造しました。単なる既製品のキャンピングカーにシミュレーターを載せたのではなく、ゴルフシミュレーターの使用環境に特化した目的設計(パーパスビルト)のカスタム車両であることが、このビジネスの重要なポイントです。そこに専用マーケティングプラットフォームも統合されています。
オーストラリアゴルフ界の名家「ジャック・ニュートン」の息子がアンバサダーに
もう一人の創業メンバーがクリント・ニュートンOAMです。ニュートンというファミリーネームはオーストラリアゴルフ界では特別な響きを持ちます。
父のジャック・ニュートンは1975年全英オープンでトム・ワトソンとプレーオフを演じた往年の名プレーヤーであり、引退後は「ジャック・ニュートン・ジュニアゴルフ」というジュニア普及プログラムを設立してオーストラリアのゴルフ振興に貢献してきた人物です。クリント自身はラグビーリーグの選手・競技行政の世界で成功したキャリアを持ち、現在はジャック・ニュートン・ジュニアゴルフの会長としてゴルフ普及活動を継続しています。
フォースターとニュートンが出会ったのも、そのジャック・ニュートン・ジュニアゴルフのトーナメントが縁でした。「より多くのオーストラリア人がゴルフと出会う機会を作る」という理念が、ゴルフデイズのコアバリューに直結しています。
コーポレートイベントから学校訪問まで:「駐車スペースがあればゴルフができる」という市場の広がり
ゴルフデイズがターゲットにしている市場は、従来のゴルフ場ビジネスとは異なります。フォースターがgolf.com.auの取材で語っているのは「コーポレートイベント、学校、スポーツクラブ、特別なお祝いの場」という、ゴルフ場では実現できなかった場所へのアプローチです。キャンピングカーを使用することで、都市部のビル駐車場・農村部の空き地・アウトドアフェスティバルの会場まで、物理的な場所の制約を取り払うことができます。
また、フランチャイズネットワークの構築を目指していることも重要です。オーストラリア全土&ニュージーランドへの拡大を視野に、「地域密着型のオペレーター(フランチャイジー)が自分のキャンピングカーで地元コミュニティにゴルフを届ける」というモデルを構築しようとしています。ゴルフ施設への大規模な固定費投資なしに参入できるスモールビジネスモデルとして、ゴルフ人口の少ない地方部への普及を狙ったものです。
日本への示唆:「場所を持たないゴルフ体験ビジネス」が示す可能性
ゴルフデイズが示すビジネスモデルは、日本市場においても示唆に富みます。日本ではゴルフシミュレーターを使ったインドア練習場・バーラウンジ業態は主要都市圏を中心に普及が進んでいますが、いずれも固定施設への投資が前提でした。一方、ゴルフデイズのようなモバイル型は、イベント単位での課金モデルが可能で、初期投資をキャンピングカー1台分に抑えながら複数の市場にアクセスできます。
日本では企業のチームビルディングや接待ゴルフの代替としてシミュレーターの需要が高まっており、キャンピングカー文化の浸透(2023年のキャンピングカー登録台数は約17万台で過去最多更新)と掛け合わせると、国内でも類似コンセプトが生まれる素地があります。タイガー・ウッズ開発関与のFull Swing KITという技術的な裏付けと、フランチャイズによるスケーラビリティを持つゴルフデイズのモデルは、世界のゴルフビジネスの可能性を広げる事例として注目に値します。

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